【文献資料】日本のLGBの人口に占める割合2009年03月17日 14:47

日本で、「LGBの人口に占める割合」に関連する調査が行なわれたものは、私の知る限り4種類あります。(もっと、国なり、研究者なりが、全国規模の統計調査を行なう際に、性的指向に関する質問群も設けた調査を行ない、LGBの現状を把握する試みを行なってしかるべきだと思うのですが、現状、希少です。) 以下に、その4種類を参考資料として挙げておきます。

■塩野徳史,市川誠一,金子典代,コーナ・ジェーン,新ヶ江章友,伊藤俊広(2009):日本成人男性におけるMSM(Men who have sex with men)人口の推定(会議録) 日本エイズ学会誌,11(4), 427
【目的】
男性同性間のHIV感染に対する予防介入と効果評価に資するデータとするため,日本人成人男性に占める同性間性的接触経験(MSM)割合を明らかにし,MSM人口を推定する。
【方法】
対象者は住民基本台帳に基づき関東,東海,近畿,九州地域を市郡規模で層化し,各地域・市郡規模別に20歳以上60歳未満の男性人口で3000人を比例配分した。東北ブロックについては同様の方法で700人を比例配分した。その数に基づき,中央調査社の所有するマスターサンプルから対象者を無作為に抽出した。質問紙の配布と回収は郵送で実施した。調査は匿名であり,個人情報に関する質問は設けていない。回答謝礼として500円分の図書券を,質問紙とは別に返送する方法を用いて配布した。
【結果】
調査は2009年2月から3月に実施し,総計1659件の回答を収集し回収率は44.8%であった。各地域別には,東北は320件(回収率45.7%),関東は645件(回収率45.1%),東海は234件(回収率48.6%),近畿は272件(回収率42.1%),九州は188件(回収率42.4%)であった。平均年齢は,全体で45.6±9.7歳であった。性交渉の相手が同性のみ,または同性と異性の両方と回答した割合は,東北1.6%,関東2.5%,東海3.0%,近畿3.7%,九州1.0%であり,全体では2.0%(95%CI:1.32%-2.66%)であった。回収率,平均年齢に地域差はなく,MSMの割合も明らかな差は認められなかった。H17年度国勢調査における対象地域,20歳以上60歳未満の成人男性人口とMSMの割合からMSM人口を565,735人(369,893人-745, 391人)と推定した。

■藤澤和美,宗像恒次,田島和雄(1996) 「日本の青少年の性行為とエイズ認識」,宗像恒次編著『青少年のエイズとセックス―自立と共生のための性教育に向けて』 日本評論社
→藤澤らは1994年に東京,札幌,名古屋,大阪,福岡の五大都市の13歳から24歳の男女1万人を無作為抽出してHIVなどの性行為感染症に関する調査を郵送自記式で行なった。有効回答を得たのは、1,968名。その調査の中でセクシュアリティに関する質問項目も設けられており、「同性に性的にひかれたことがある」と回答した人の割合は全体の20%,「同性に対し性的な興奮を感じて身体を触れ合ったことがある」と回答した人は全体の10%だった。

■木原正博,他:日本人のHIV/STD関連知識,性行動,性意識についての全国調査,平成11年度厚生科学研究費補助金エイズ対策研究事業「HIV感染症の疫学研究」研究報告書,565-583,平成12年3月
→木原らは、18歳から59歳の日本人5,000人を対象にして、性行動等に関する全国調査を実施した。結果、「同性に性行為や性的興奮を有する割合」は、男性では1.2%,女性では2.0%であった。ただし、この調査は面前自記式調査であったため、事実が回答されなかった可能性もあり、実際の数値はこれよりも高い可能性がある。

■日本性教育協会編(1983) 『青少年の性行動―わが国の高校生・大学生に関する調査・分析第2回』 小学館
→日本性教育協会が1981年に行なった調査では、同性愛に関する質問が含まれていた。7都市の大学、高校から75校を選んで、集団記入方式で調査を行ない、回収した2万枚以上の調査票の中から、男女、校種のバランスを考慮して無作為に抽出した4,990名で分析を行なった。「あなたは同性の人と性的な身体接触をしたことがありますか」との問いに「ある」と答えたのは高校生男子5.5%,高校生女子5.7%、大学生男子6.3%、大学生女子3.9%だった。